ドイツの教育制度とは

みなさんは、「マイスター(Meister)」という言葉をご存知でしょうか?
「マイスター」とは、ドイツの職人・職業人としての最高峰の国家資格です。

職業における「技術力」、「開発力」、「経営力」、「教育学」を学び、試験に合格した人のみに付与される、名誉ある国家資格になります。
日本ではあまり知られていませんが、ドイツで「マイスター」を付与された人はEU諸国全域でこの資格が有効であるばかりでなく、世界でも通用するのがこの資格の魅力です。

ドイツの教育システムには、大学進学のほかに、300以上の職種のスペシャリスト、「マイスター」を獲得するために、理論と実勢を学ぶことができる「マイスター制度」が存在します。

ドイツの「マイスター」を育成する仕組みである「マイスター制度」は、世界中で注目されてきており、アメリカや中国、日本においても最近では「マイスター」という言葉が、さまざまなところで目につくようになってきました。

今回は、ドイツの教育制度の基本的な仕組み、そしてその先の「マイスター制度」について解説していきます。

「マイスター制度」の仕組みは、長い歴史の中で育まれてきた教育制度で、複雑かつ巧妙にできています。
そのため、まずはドイツの教育制度から説明をし、「マイスター制度」について理解を深めていただきたいと思います。

ドイツの教育システムの特徴

ドイツの教育システムが優れている点は、およそ300職種以上とも言われる職種の、理論と実践力を備えたスペシャリストを、学校と企業が手を取り合い、育成し世に出していく仕組みにあります。

ドイツの教育システムでは、5年生で進学コース職人コースに分かれ、それぞれのコースで専門分野に特化した教育を受けるようになります。

日本での小学校に該当する「グルントシューレ(Grundschule)」で4年生まで勉強し、その後、大学進学を目指す「ギムナジウム(Gymnasium)」実科学校「レアルシューレ(Realschule)」基幹学校「ハウプトシューレ(Hauptschule)」、さらに制度として最近できた総合学校「ゲザムトシューレ(Gesamtschule)」などに進路を選択します。

Emma
Emma
卒業という形式ではなく、それぞれの形態の学校に編入していくのも、日本とは違うところですね。

進学コースである「ギムナジウム(Gymnasium)」や、総合学校「ゲザムトシューレ(Gesamtschule)」から大学進学を目指すコースは、日本での高校から大学進学を目指す流れと似ていますが、「ゲゼレ(Geselle)」の認定や「マイスター」の称号を目指す職人コースは、聞き慣れないものではないでしょうか。

この職人コースを、ドイツでは「デュアルシステム」と称しています。

Emma
Emma
「マイスター制度」は、本来「デュアルシステム」と呼ぶのがドイツでの正式呼称です
日本では、「マイスター制度」という言葉が定着しつつあるため、「マイスター制度」と紹介していきます。

マイスターになれば、職種によっては経営、開業する資格も付随します。
大学進学とスペシャリストになる道、両方の優れた教育の仕組みがあるのが、ドイツの教育制度の特徴です。

マイスター制度(デュアルシステム)の特徴

ドイツと日本の大学進学率

日本と異なり、ドイツは大卒の割合が低く、2017年の統計では、大学進学率が日本は51%に対し、ドイツは28%と、残りの72%の学生は何らかの職業のスペシャリストを目指すことになります

ドイツで職人・職業人を目指す人が多いのには、理由があります。
職人のプロ「ゲゼレ」になり、さらには国家資格の「マイスター」を取得することで、学士と同等の社会的地位を手にすることができます

国に認められた社会的地位を手にすることで、生涯年収も上がり、安定した生活を送ることができるのも人気の理由です。

Emma
Emma
ドイツでは「マイスター制度」を充実させることで、国として職業・職業人を応援しているんですね。

実科学校「Realschule」の生徒は9年生(日本では高校2年生)のとき、基幹学校「ハウプトシューレHauptschule」では8年生(日本では高校1年生)のときに、自分が目指す職人・職業人になるために、「マイスター制度(デュアルシステム)」でスペシャリストを目指します。

総合学校「ゲザムトシューレ(Gesamtschule)」の生徒も、大学進学と職人・職業人のスペシャリストを目指す生徒と別れていきます。
「マイスター制度(デュアルシステム)」の多くは、最初の3年から3年半ほどで「ゲゼレ」というスペシャリストの認定を受け、さらに、経営学、教育学、開発力、技術力の4本柱を取得したものだけが、「マイスター」の称号を得ることになります。

ドイツのスペシャリストを極めた人にのみ付与されるマイスター

マイスターの社会的地位

「マイスター制度」で目指す「マイスター」という称号の社会的地位は高く、ドイツ教育研究省のヴァンカ大臣も、大学卒である「学士(バチュラー)」と「マイスター」は同等の地位であることを発表しています(2014年5月19日発表)

進学コースでの大学卒業時の学士の地位と、職人コースのマイスターの地位が対等であることも、ドイツの教育システムの大きな特徴ですね。

また、大学を卒業した人と「マイスター」の平均生涯年収を比較すると、職種によって異なりますが、同等またはマイスターのほうが高いとも言われています。
ケルン手工業会議所で「マイスター制度」における若者のキャリアアップ教育の責任者から、その理由をうかがってきました。

理由は大きく二点あります。
一点目は、「マイスター」の場合には「ゲゼレ」を取得する研修生の10代半ばから、収入(学びながら給料)が発生するため、大学卒業時が20代半ばから30代のドイツの場合、その時点ですでに生涯の年収に、差が生まれてしまっているという事実です。

二点目は、「マイスター」の場合には自分で起業する道を選択する場合、職種にもよりますが、事業がうまくいけば青天井に稼ぐことができるのが、現在のドイツだと語っていました。

Emma
Emma
夢がある話ですね!

私の知り合いにも、たくさん稼いでいるマイスターが大勢います。
大きな農場で持ち馬を飼っていたり、外国に別荘を持っていたり、年に何度も海外旅行を楽しんだり、テスラやポルシェなどの高級車に乗るマイスターはもちろん、マイスターとして活躍した後豊かな老後を送っていたりなど、人生を謳歌している人ばかりです。

Emma
Emma
身も蓋もないことを言ってしまえば、生涯年収が高いからこそ、豊かな生活を送れているのかもしれませんね。

ドイツでは、小学校5年生で大学にいくのか、職人になるのか決めなくてはいけないの?

日本でマイスター制度の話をすると、「ドイツでは小学校5年生で、大学にいくのか職人になるのか決めなくてはいけないの?まだ小学生なのに、人生が決まってしまってかわいそう。」といった疑問や心配の声をよく聞きます。

もちろんドイツでも、教育に関するさまざまな課題を解決するべく、施作を打っていて、小学校5年生で一旦区分けがされたとしても、職人コースの生徒が希望すれば、大学にいく道も残されています

途中で、大学進学かスペシャリストを目指すか選択できる総合学校「ゲザムトシューレ(Gesamtschule)」も、その弊害を減らすためにできた学校形態です。

Emma
Emma
小学校5年生で、一度は進路を決めても、その後歩む道を変更することは難しくないということですね。

まとめ

ドイツの教育システム、特に日本には馴染みがない、「マイスター制度」について解説しました。

ドイツの子どもたちは、自分がなりたい、好きな職業を選んでスペシャリストになる道がしっかりと準備されています。
小学校5年生と、まだ幼いうちに進路を決めたとしても、のちのち歩む道を変更することもできます

Emma
Emma
そういった意味ではドイツに比べて、日本は、学校卒業後の就職活動が一生を決めるような印象があります。決まったレールから外れてしまうと、その後のキャリアアップが大変だという意見をよく耳にします。
Emma
Emma
ドイツは1回チャレンジした道が自分に合っていない場合は、ほかの職種への移行、さらにはキャリアアップが十分に可能な制度が整っています。

若いときには勉強ぎらいだったのに、職人・職業人になる過程で、学ぶことの楽しさに目覚めて、マイスターになってから、大学進学をする方々の話はよく聞きます
反対に、「ギムナジウム」に進み「学士(バチュラー)」を取得した場合でも、「ゲゼレ」や「マイスター」への道を歩む人もいます。

小学5年生で、進学コースか職人・職業人コースかを決定してしまうドイツの教育システムですが、その後の人生を決めつけてしまうようなものではなく、多様な生き方をサポートしてくれます
さらに、その後の歩む道を変えるチャンスもある、実践的な教育システムだということが伝わりましたでしょうか。